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ぽっぽ便りvol.12

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ぽっぽ便りvol.12

感覚をひらき、生きる豊かさに出会う

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第1回「てとて、ONE Health芸術祭」を開催しました

9月21日から23日まで、第1回「てとて、ONE Health芸術祭」を開催しました。3日間で本当にたくさんの方にお越しいただきました。足を運んでくださった皆さま、一緒につくってくださった皆さま、本当にありがとうございました。

芸術祭を終えた今、なぜ緑の森どうぶつ病院グループは芸術祭を開催しているのかについて改めて少しお話しさせてください。

今回芸術祭の総合PDを務めさせていただきました私吉見季里子は5年前、東京から旭川へ移り住み、そこで初めて、日々の暮らしの中に、こんなにも豊かに感じられるものがあるのだとこの地に教えてもらいました。


風のにおい。どうぶつの気配。土の温度。


季節が変わることや、すぐそばで人間以外の命が生きていることを、以前よりずっと身近に感じるようになりました。自分もその中の一つの命なのだと感じたことが、今回のコンセプト「生きることをもう一度、感覚から。」につながっています。

 

緑の森どうぶつ病院から始まったNPO法人手と手の森は、「てとて、旭川しあわせプロジェクト」として、地域の皆さまと動物愛護や動物福祉の啓蒙活動を続けてきました。そして今、その歩みは、人も、どうぶつも、自然もつながっていると考える「手と手ONE Healthプロジェクト」へと広がっています。

その中で、私が芸術祭をつくりたいと思ったのは、芸術には、感覚をひらき、自分が感じたことや、まだ目に見えない可能性を信じていく力があると思っているからです。

今回、子どもや若者たちが、その場で感じ取ったものと、自分の内にあるものを重ね、自らの表現へと変えていく姿に何度も驚かされました。アーティスト:エバレット・ケネディ・ブラウンさんのワークショップでも、参加者の皆さんから、予想していなかった表現が生まれました。その人の中にあるものが、出会いや体験によって姿を現す。そんなかけがえのない瞬間に立ち会えたことが、とても嬉しかったです。

そして、柴幸男さんの『反復かつ連続』という芝居にも、強く心を動かされ芸術の本質を魅せられました。普段は演劇に触れる機会の少ないお客様が涙を流される姿もあり、私自身も、気づけば涙がこぼれていました。

その涙の理由を、すべて言葉にすることはできません。ただ、目の前の表現に圧倒される中で、当たり前に受け止めていた世界のかけがえのなさが、実感として迫ってきました。生きているということを、こんなにも深く感じる瞬間があるのかと。

芸術には、自分の理解や想像を超えて、世界の見え方を揺さぶる力があるのだと思います。その場では受け止めきれなかったものが、後になって、日々の何げない瞬間に意味を持つこともある。私は、その面白さと、私たちの中で生き続ける力を信じています。

私がこの土地でつないでいきたいと願っているのは、そんな、言葉になる前に心や体が動く時間なのかもしれません。誰かの表現に出会うことも、自分で表現することも、自分が思っていた以上に豊かな世界があると知る経験です。そこで生まれた感覚を、そのまんま大切にしていきたいです。

昨年は、自社でできる範囲で、本当に小さく「第0回」として芸術祭を開催しました。今年は地域の中高生や文化団体、協賛企業、アーティストの皆さまなど、本当に多くの方に助けていただいて、開催できた第1回でした。

その中で、何を感じてもらうかを、こちらが決めきることはできないということは本当にできないなと痛感しました。思いを共有し、出会う場を丁寧につくる。その先でどんな景色が生まれるのかは、関わる人たちの感覚や表現を信じたいと思っています。

こうして感覚をひらき、まだ知らないものに出会うことは、私が大切にしている、レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』とも重なります。

世界には、自分がまだ気づいていない不思議がある。
知っているつもりの場所にも、驚くべきものがある。

そのことに心をひらいて生きていると、思いがけない人や表現に出会う。心が動き、行動が変わり、また次の出会いにつながっていく。私は、そんなセレンディピティが生まれる、かけがえのない連続した流れのなかで生きていたいと思っています。

一緒に暮らすどうぶつの何げない仕草に、ふと心が動く。いつもの散歩道で、風のにおいや季節の変化に気づく。言葉にはしなくても、その時間がかけがえのないものに感じられる。

皆さまにも、そんな瞬間があるのではないでしょうか。

 

私にとってONE Healthは、こうした暮らしの中での実感ともつながっています。人も、どうぶつも、自然も、同じ世界に生きている。自分もその中で生かされていると感じ、そばにある命がいとおしくなる。その感覚を、大切にしていきたいですね。

これからも様々な方とこの土地を歩き、ここに暮らす皆さまと出会いながら、この芸術祭を育てていければと思います。

どんな表現が生まれるのか、誰の心に何が残るのか。とても楽しみにしています。

また、来年も皆さまとご一緒できたら嬉しいです。


Text by KIRIKO